行動経済学/Masters 会長 濱出健一

<コラム>行動経済学/Masters 会長 濱出健一
    2017.10.9 2017年のノーベル経済学賞を行動経済学に貢献した米シカゴ大のリチャード・セイラー教授に授与すると発表しました。
受賞理由は行動経済学の分野での研究です。人々が悪い意思決定を下してしまう理由に関しての画期的な研究が評価されることとなりました。
 行動経済学とは、従来の経済学では示すことができなかった社会現象や経済行動を人間の行動を観察することで説明しようとする新たな経済学です。従来、人は合理的かつ功利的な判断で動くと考えられていましたが、人間は感情で動く生き物のため、自己の経済利益を最大化させるために行動できる人間は存在しません。
そこで、人間の非合理的な行動について、心理学的な見地も念頭に置きつつ理論的に説明する試みが行われるようになりました。これが、行動経済学です。
行動経済学では、非合理的な行動をとるのは一定の法則があると定義されており、その法則を研究する経済学のことで、2002年に心理学者のダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞して以来、注目されるようになりました。
 行動経済学の核といわれているのが「プロスペクト理論」と呼ばれるものです。
プロスペクト理論は、人は利益を得る場面では「確実に手に入れる」ことを優先し、反対に損失を被る場面では「最大限に回避する」ことを優先する傾向があるという心理状態を表した理論です。ギャンブルに例えると、始めは倍率が低くても勝てる確率の高い勝負をします。ここでは倍率が小さくても、「確実に勝ちたい」という心理が働いているからです。
しかし、徐々に負けが込み始めた場合、今度は倍率の小さい勝てる勝負をするのではなく、少しでも早く負けた分を取り返すように倍率の高い勝負に出ようとする心理が働きます。
実際、人は獲得の喜びよりも損失の痛みの方が2~4倍大きく感じるといわれており、「失う恐怖」を何よりも避けたいと考えているのです。
 この「失う恐怖」が近年の政治、政府、大企業の中に蔓延して新しいことが出来ない、一歩踏み出すことよりリスク回避のことばかりを考えすぎているのではないでしょうか。
 前述した行動経済学はあくまでも、一例に過ぎません。他にも、「アンカリング効果」や「フレーミング効果」など、どこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
  行動経済学は、より「人間的 」な学問といえます。
さらに、日々研究や実験も進んでおりまだまだ発展を遂げそうです。現在、行動経済学はマーケティングや商品企画といった様々な分野で活用されており、行動経済学の心理的効果を学ぶことで、より早く相手の狙いを見つけ出すことができるようになるかもしれません。