「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

光量子計算機 年内稼働へ 国内初 室温で高速度 理研,NTTなど

理化学研究所とNTTなどのチームは、次世代の計算機「光量子コンピューター」を年内にも稼働させると発表した。国内では初めて。
量子コンピューターは、ミクロの世界に特有な物理法則「量子力学」を利用して計算を行う。日本では昨年、理研や富士通、大阪大学などが相次いで国産の量子コンピューターを稼働させている。ただ、いずれも計算を実現させる素子「量子ビット」に超伝導回路を使う方式で、極低温の冷凍機内で稼働させる必要があった。
今回の光量子コンピューターは室温で稼働可能で、消費電力を抑えることができ、「光」を使うため計算速度が速く、高度な計算処理ができるという。インターネットのクラウドを介して、共同研究を行う大学や研究機関の研究者が利用できるとしている。

大阪大など 強靭で分解しやすい新素材PCL リサイクルに寄与

大阪大などの研究チームは、引っ張ってもちぎれにくく、分解されやすい性質を併せ持つポリエステル系の新素材を開発したと発表した。論文が10月30日、国際科学誌に掲載された。この新素材は、従来の8倍以上の強靭性があり、繊維として有望なだけでなく、廃棄物となった他の化学繊維と混合すれば、生分解性のある、より高性能な繊維として再生できる可能性があるという。
これはポリエステルの一種、ポリカプロラクトン(PCL)で、微生物などが持つリパーゼという酵素によって分解され、リサイクルしやすい素材として注目されている。だが、このままでは比較的ちぎれやすく、分解にも時間がかかることが実用化の課題だった。
そこで大阪大などのチームは、繊維を構成するPCLなどのヒモ状の分子を輪になった分子を別の分子の穴に通すと、全体として柔軟で丈夫な構造になることに着目。PCLと輪になった分子を組み合わせることで、元のPCLよりも8倍以上ちぎれにくく、20倍効率よく分解される新素材を開発することに成功した。

川崎重工 水素3割混焼の大型発電エンジン安定運転に成功

川崎重工業は10月29日、工場内に電力を供給する大型ガスエンジンの燃料に、燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を3割混焼して安定的に発電することに成功した大型発電エンジンを公開した。
同社の神戸市の自社工場の設備は、燃料の3割を都市ガスから水素に置き換えて発電することができる。担当者が制御室で操作すると3分ほどで全燃料に占める水素が3割まで上昇。大型混焼発電エンジンの安定運転を実証した。
工場の建物の横に都市ガスと水素を混ぜる設備を設置したほか、着火しやすい特性のある水素が漏れた場合に、いち早く検出できるよう検知器を設置している。
同社のよると、水素を3割混ぜることで都市ガスだけの場合に比べて、年間のCO2排出量を420世帯分に相当するおよそ1,150削減できるとしている。

岩谷産業 国内初の旅客用水素燃料電池船「まほろば」完成

岩谷産業は10月24日、2025年大阪・関西万博で会場の夢洲(所在地:大阪市此花区)とユニバーサルシティポート(同北区中之島)の約11kmを結ぶ交通機関に一つとして使われる、水素燃料電池船「まほろば」が完成したと発表した。まほろばは、全長約30mで、定員は150人。船内に水素タンクを備え、空気中の酸素を化学反応させることで発電して動く仕組み。航行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代の船舶だ。旅客用の水素燃料電池船は国内初という。
万博時、使用される際、運航は京阪グループの大阪水上バスに委託する。

トヨタ, 岩谷産業 液体水素を車に充填 既存インフラで初実証

トヨタ自動車と岩谷産業は10月24日、岩谷産業が運営する愛知県刈谷市の水素ステーションで、水素を液体の状態で車に充填する国内初の実証実験を公開した。水素社会を見据え、既存のインフラで進める水素自動車普及策の一環。
既存の水素ステーションは、水素を気体の状態で充填することが前提。今回、専用設備を開発して液体でも充填できるようにした。水素の用量保管・輸送は気体→液体化が喫緊の課題だけに、既存のステーションでも液体水素を充填しやすくすることは即、水素エンジン車の普及につながるとみられる。

中国のCATL 航続距離最長400kmのPHV向け新型電池を発表

車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は10月24日、北京市内で新製品発表会を開き、プラグインハイブリッド車(PHV)向けの新型電池を開発したと紹介した。この新型電池の航続距離は最長400kmで、280km走行分の充電をわずか10分で完了できるという。

ノーリツ 豪州で水素100%燃焼家庭用給湯器の実証実験

ノーリツ「(本社:神戸市)は10月22日、グループ会社のDux Manufacturing Ltd(所在地:オーストラリア、以下、Dux)が、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みをを加速させるため、西オーストラリアを中心としたエネルギーインフラ会社、ATCO Gas Australia Pty Ltd(以下、ATCO)と共同で、2024年12月から水素100%燃焼の家庭用給湯器の実証実験を開始すると発表した。
ノーリツ、Dux、ATCOの3社は協定書を締結。ノーリツが開発した水素100%燃焼の家庭用給湯器をATCOの水素住宅に導入し、2024年12月から約2年間、日常生活での稼働状況を検証する。Duxは実験中の機器メンテナンスを担う。

アステラス 英バイオ企業から認知症治療薬の開発権取得

アステラス製薬(本社:東京都中央区)は10月8日、英国バイオ企業、アビアドバイオ(本社:英国・ロンドン)との間で認知症向けの遺伝子治療薬候補を開発・商業化できる権利を取得することで契約を締結したと発表した。これによりアステラスはアビアドバイオの新薬候補、「AVB-101」を全世界で開発・商業化する権利を得る。現在、初期段階の臨床試験(治験)に入っている。
今回の契約によりアステラスは、まず一時金として最大5,000万ドル(約73億円)を支払う。さらに開発などの進捗に応じて最大21.8億ドルを支払う可能性がある。

トヨタ eVTOL開発の米ジョビー社に5億㌦追加出資

トヨタ自動車は10月2日、電動垂直離着陸機(eVTOL、空飛ぶクルマ)を開発する米ジョビー・アビエーション(以下、ジョビー社)に5億ドルを追加出資することで合意したと発表した。eVTOLの研究開発段階から実用化に向けた取り組みを加速していく。今回の追加出資により、トヨタのジョビー社への投資額は2020年1月の3.94億ドルと合わせ累計8.94億ドルとなる。

第42回大阪科学賞「宇宙線」「培養肉」研究の2人が受賞

科学技術の発展に貢献した関西の50歳以下の研究者を表彰する大阪科学賞。42回目となる今年は、大阪公立大学の藤井俊博准教授と大阪大学の松崎典弥教授の受賞が決まった。表彰式は11月9日に行われる予定。
藤井准教授は国際研究グループのメンバーとして、宇宙から降り注ぐ小さな粒子「宇宙線」のうち、計算上わずか1グラムで地球が破壊されるほどの巨大なエネルギーを持つものを発見し、この宇宙線を「アマテラス粒子」と名付けた。
また、松崎教授らの研究グループは細胞を立体的に成長させる独自の技術を応用し、霜降り和牛のような味と食感を再現する「培養肉」の開発を進めており、2025年大阪・関西万博で展示する予定という。